■ 「新・エヴァンスを聴け!」 by富良野のオダジー 2008年04月06日(日)

  42,221 byte先月上京した時にCDショップ(私はいまだにレコード屋と言ってしまう)を覗いた。CDは買わなかったのだが、「新・エヴァンスを聴け!」を買ってしまった。
著者は違うが、「新・コルトレーンを聴け!」が面白かったので、ついつい手が出てしまった。コルトレーンの時と同じように、欲しいCDのところの角を折りながら読んだのだが、その折り目が27箇所付いた。さすがにCDを27枚も買えないので、厳選して、とりあえず4枚注文した。そのうちの2枚は今までにも買おうかどうか迷っていたものだ。実は手元にはレコードを合わせて十数枚はある。それらも含めて、ここ当分はビル・エヴァンス三昧(研究?)をしようと思う。
著者の中山康樹さんは『「ワルツ・フォー・デビー」がエヴァンスのすべてではない!』と“挑発”しているが、私も持っているCDの中で「ワルツ・フォー・デビー」を含むいわゆるリヴァーサイド4部作しか聞いていない。
中山さんがワルツ・フォー・デビーがすべてではないと言っているのは、ワルツ・フォー・デビーは象徴でこの4部作をすべてではないと言っているのだ。
リヴァーサイド4部作とは、ベースのスコット・ラファロ、ドラムのポール・モチアンとのトリオによる、リヴァーサイドレーベルに吹き込んだもの。”Portrait in Jazz”、”Explorations”、”Waltz for Debby”、”Sunday at the Village Vanguard”の4枚で、エヴァンスがラファロに出会ってから、ラファロが交通事故で急逝するまでの2年ほどの短い間に残された作品。
中山さんは4部作を否定しているのではなく、4部作はビル・エヴァンスの1つの側面にしか過ぎないと力説しているのだ。
私は以前にも書いたが、その道のプロの人が言っていることは、まず受け入れるタイプだ。受け入れてから、自分のスタンス、置かれている立場、感情、直感、勘などを総動員(相変わらずオーバー)して、自分の考えをとりあえず作る。とりあえずなのは、結構考えが変わるからだ(ジャズに意固地は禁物!)。
私が2年ぐらい前に買って、スルーした(ピンとこなかった)CD、「You Must Believe in Spring」を中山さんは本の中で「このアルバム、エヴァンスのみならずジャズ・ピアノ・トリオ史上、真っ先に挙げられるべき名盤だろう」と言い切っている。
納得しないまま、中山さんがここまで言っているのだし、折角CD持っているのだし、ここはじっくり聞いてみようと、昨日からずっと聞いている。
ジャズを聞きだしてから、すでに30年以上が経っている。ビル・エヴァンスにのめり込んだことはないが、常に横にはいた。
私にとってビル・エヴァンスの衝撃より、ビル・エヴァンストリオのベースシスト、スコット・ラファロの衝撃のほうが大きかった。それは、いまだにそうだ。もちろん、ビル・エヴァンスあってのスコット・ラファロだと分かってはいるが、スコット・ラファロのベースから教えてもらったこと、はじまったことが、いっぱいある。
「You Must Believe in Spring」である。
ここには特徴的なフレーズはあるが、「枯葉」のような分かりやすいメロディがない。ボサノバのような乗れるリズムもない。誰でもが好む“調味料”がない。あるのは雰囲気、空気感、ムードのようなあやういものだけ。
外の景色を眺めながら聞くのが良かった。色々な情景が浮かんでくる。映画音楽としても成り立つような気がする。画集を見ながら聞くのも良かった。フォアン・ミロ、アルベルト・ジャコメッティが私的にはぴったりだった。
聞き進むうちに、もしベースがスコット・ラファロだったら、一も二もなく愛聴盤になっていただろうという思いが浮かんだ。それは、ベースのエディ・ゴメスが悪いのではなく、私の“トラウマ”のせいだ。私の中ではビル・エヴァンスとスコット・ラファロは一体なのだ。
スコット・ラファロの入っていないCDがもうすぐ4枚届く。これを機会に、トラウマからの脱出を試みようと思う。
それにしても、中山さんも書いているが、ジャズCDのボーナストラック(You Must Believe in Springにも3曲ある)ほど、余計なお世話はない。これについては、またいつか書きたいと思う。
 


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