「ああ、こわい」ー感嘆詞的形容詞
方言レクチャー シリーズ 第6弾!

「ああ、こわい」

エクソシストや四谷怪談(ふるっ!)を見ているというわけではないのです。
「ああ、疲れた〜」 と言っているのです。

道産子にとって冬場の雪かき作業はなかなかの重労働。
汗をかきかきようやく一仕事終えたとき、自然に出てしまう言葉が、この「ああ、こわい」なんです。

長距離を走り終えて息が上がったとき、山登りでようやく頂上にたどり着いたとき、農作業のようなハードきわまりない力仕事をやり終えたときなど、「肉体的にとてもしんどくて、もはや限界じゃあ」と言うときに、道産子が思わず発する言葉がこれなんですね。

標準語だと「ああ、疲れた〜」。

しかし、道産子の一人として言わせてもらえば、「ああ、疲れた〜」では、表現があまりにも平板かつ凡庸で、真の「しんどさ」というものがイマイチ伝わってこないじゃありませんか。
ゴルフで言うと、カートに乗ってワンラウンドした程度の軟弱な疲労感といった趣であります。

その点「ああ、こわい!」は伝達力満点。
試しに体全体に汗をかくくらいハードな運動した後、ぜいぜいと肩で息をしながら、「ああ、こわい」と脱力感たっぷりに言い放ってごらんなさい。
ほら、言葉がすんなり体に馴染むでしょう?
いかにも自然な表現という感じがするでしょう?
「辛い」思いを表現してあまりあるものがあるでしょう?

「疲れた〜」と標準語で言えるうちはまだまだなのです。
「こわい」という言葉が自然に口をついて出てくるようでなければ、「本物の疲れ」と言えないのではないかと道産子は主張したいわけです。

暴論かましてよかですか?

道産子が疲れたときに発する「こわい」という言葉 は、もはや「形容詞」などという軟弱な品詞の領域を超越し、「およよ!」「どひゃー!」「ふぎゃー!」等々、本能の言語ともいえる「感嘆詞」の域にまでアウフヘーベンされているのじゃああああああ!(おお、なんと大胆にして不敵なる発言!)。

え〜、勢い余って思わず取り乱してしまいましたが、そんなわけでありますので、道産子の友人と一緒にまちを歩いているとき、友人が 「ああ、こわい」といっても、それは「やーさんにガンをつけられた」とか、「空からう○こが降ってきそうだ」とか、「ひぐまがまちを散歩している」とか、「エイリアンに襲われた」などという、スリルとサスペンスあふれる状況を意味するのではなく、ただ単に「歩き疲れて、ああしんど」というだけのことでありますので、そこんとこをよ〜く理解してあげて、すみやかに休憩をとってあげていただきたいのであります。

ということで、「こわい」という方言の意味について、長々と解説させていただきましたが、実は道産子というやつは、この「こわい」を、ふつうに「恐ろしい」 という本来の意味で使う場合もあるんです(当然と言えば当然)。

たとえば。

あなたの化粧メイクにリキが入りすぎて、とてもこの世のものとは思えない仕上がりに陥ってしまったとき。
そのときあなたに向かって発せられた「ああ、こわい!
」は文字通り
「怖い!」
「おそろしい!」
「化け物!」
という意味
で使われているわけでありますので、どうかひとつ、ど〜かひとつ、くれぐれも油断なさらぬようお願い致したいのであります。

*ネット検索してみたら、ここに「こわい」に関するすばらしい解説がありました。
「こわい」は「怖い」 ではなく「手強い(てごわい)」の「強(こわ)い」だったんですね。
体が疲れ切って強ばった(こわばった)状態になること。
これが「こわい」 の語源であります。


新シリーズ よく使う北海道弁詳説
−北海道弁をより深く知りたい方のために−

@うるかす
Aあずましい
B書かさる
Cゴミを投げる
Dげっぱ
Eこわい
F手袋をはく
Gはんかくさい
Hばくる
Iいいふりこきのがんべたかり
Jおだつ
Kがおる
Lおばんでした
Mいづ(ず)い
Nしばれる
O(へ)なまずるい
Pなんもなんも
Qなまら
Rあずる

伏田良のお笑い北海道方言辞典


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