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「なんも、なんも」ー道産子の忍耐強さが生んだ言葉
方言レクチャー シリーズ 第17弾!
「すまんけど、今日あんたんとこのトラクター貸してもらえんべか」
「なしたのさ?」
「いやあ、昨日家のトラクター急にエン故(エンジン故障)しちゃってさ。明後日雨が来るっていうから、今日中に畑仕事終わらせたいのさ」
「へえ、そりゃ大変だなあ、うちので良かったらなんぼでも使えばいいしょ」
「いやあ、すまんねえ」
「な〜んもだ、なんも、なんも」
「お宅ホントに使わんのかい?」
「家はもう耕起終わってるから、なんも気遣うことないって」
「いやあ、ホントすまんねえ」
「なんも、なんも」
「なんもさ」「なんもなんも」。
相手にお礼を言われたり、褒められたときに道産子が返す謙譲の言葉です。
標準語だと「いえいえ、どういたしまして」 。
「いえいえ、どういたしまして」といういかにも事務的な表現に対して、「なんもなんも」は、気を遣ってくれる相手に対して、「何もそんなに気を遣わなくても良いよ」ということをよりフレンドリーな形で伝える。
一見ぶっきらぼうにさえ響く言葉の中に、何とも言えないやさしさがこめられた道産子ならではの表現なのであります。
上記のような会話の場合でも、実は自分も明日トラクターが必要なのだけど、隣が困ってるなら、自分は我慢してでも貸してあげたい、そんなシチュエーションさえ考えられる表現であり、そこには道産子の人の良さが潜んでいるのです。
「畑仕事大変ですねえ」
「なんもさ」
「毎朝早いんでしょう?」
「なんも、なんも」
道産子は、このように他人からのねぎらいや賞賛の言葉に対しても「なんも、なんも」と対応します。
その意味するところは、単なる謙譲ばかりではなく、 「なんもなんも」と否定することによって、実は「な〜に、このくらい」と自らを鼓舞しようとする意図も読み取れるわけであります。
相手に気を遣わせまいとする「優しさ」と、自らを鼓舞しようとする「力強さ・我慢強さ」の入り交じった、道産子ならではの奥深い表現であると言えましょう。
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