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『おばんでした』ー謙譲の美徳的過去形表現
方言レクチャー シリーズ第13弾!
■「おばんでした〜」。
みなさんよくご存じの北海道弁のごあいさつですね。
標準語だと「今晩は〜」 。
「おばんでございます」 とも言いますが、どちらかというと「おばんでした〜」と過去形で言う人の方が多いような気がします。
どちらも大した違いはないのですが、「でした〜」 と過去形で言う方が、よりフレンドリーに響くと感じるのは私だけでしょうか。
過去形の表現には、「夜分にまことに申し訳ありませんね」という「控えめな思い」が込められているような気がするのです。
■「伏田でした。毎度様でした」。
受話器の向こうから聞こえてくる元気な声。
でもこれ、会話が終わった後の挨拶ではないのです。
これから会話が始まろうとしている冒頭のごあいさつがこれなのですよ。
「伏田です。毎度様です」 と言うべきところを、道産子はなぜか過去形で言うんですね。
いったいなぜなんでしょう。
これも「おばんでした〜」と同様の効果を狙ったものと小生は睨んでいるのですが、いかがなものでしょう。
「伏田です。毎度様です」
と言い切るより、「伏田でした。毎度様でした」と過去形で言った方が控えめな感じがしません?
「伏田です。毎度様です」にはどこかビジネスライクな響きがある。
それに比べて「伏田でした。毎度様でした」には「伏田のようなものでよろしかったでしょうか。毎度毎度ごひいきいただいておりまして本当に申し訳ありません」的謙譲の美徳が込められているんです。
■「ヤクルトいかがですか〜?」
おなじみヤクルトおばさんの出張販売であります。
こういう時の「お断り文句」、みなさんどうしてらっしゃいます?
「今日はいりません」
あるいは、
「けっこうです」
でしょうか。
う〜ん、これでは冷たい感じに響いてしますよね。
この言い方では、せっかく来て下さったおばさんに対して、邪魔者扱いしているという空気が生まれてしまうではありませんか。
毎日汗だくになってがんばっているおばさんに対して、それではあまりに失礼。
こう言うとき便利なのが道産子のこの過去形表現なんです。
「ヤクルトいかがですか〜?」
「今日はよかったですぅ〜」 。
ほら、突然雰囲気が明るくなったでしょう?
いかにも「 フレンドリー」って感じでしょう?
でもって、心がほのぼのとしてくるでしょう?
「いりません」「けっこうです」ではなく「よかったですぅ〜」。
断られた方だって、この言い方なら傷つかない。
「今日はだめだったけど、明日なら買ってくれるかも」という期待感すら生まれて来るではありませんか。
■柔らかコミュニケーションを心がけていらっしゃるあなた。
道産子のやさしい心根と謙譲の精神が生んだ、この過去形表現、ぜひ一度お試しになってはいかが?
*北海道発のこの過去形表現。今では飲食業関係を中心に全国的な広がりを見せております。
ほら、あのレストランなんかで良く耳にする「ご注文は以上でよろしかったでしょうか?」 ってやつ。ちょっと以前には「ご注文は以上でよろしいでしょうか?」って事務的に言ってたんですけどね。
*「おばんでした」 はアクセントをつけず、フラットに発音しましょう。
「ば」 にアクセントをつけると、「おば(さ)ん」に殴られます。
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