『しばれるー体験しなければわからない超極寒気温
方言レクチャー  シリーズ第15弾!

■数ある北海道の方言の中でも最もポピュラーな方言中の方言です。
寒いという言葉では表現しきれないマイナス20度を超えるような(地方によって多少格差あり)厳しい寒さになる」ことを言います。
こう言っても、そのような極寒体験をしたことのない人にはピンとこない話しですよね。
1月〜2月頃、前日良く晴れた日の朝には「放射冷却現象」と呼ばれる放熱現象で、このようなとんでもない気温になってしまうことが、今でも年に3〜4度あるんです。
特に富良野は盆地性の気候のため、道内でも冷え込みの厳しさはトップクラス。
マイナス30℃を超えることも、一冬に1〜2度はあるんです。

■私が子供の頃は、家も今のようには機密性が高くなく、暖房設備も十分でなかったので、こうした日の朝にはあちこちで喜劇的な情景が展開されたものでした。
その@吐く息(寝息)が凍って布団の首周りがかちんかちんになる
そのAポンプ(水道がなかった) が凍って水が出なくなる
そのB玄関の戸(引き戸) が凍って開かなくなる
そのC金魚鉢の水が凍り、金魚が仮死状態になる(氷を溶かすと生き返る)
そのDトイレ(水洗式でない)のうん○が、槍状にとんがって、便器から顔を覗かせる。先端部分を金槌でたたき割らないと、シリに刺さってしまいそうでこわくて使えない。

エトセトラ、エトセトラ。

■こうした「しばれ」は登校時間にも影響を及ぼし、早朝 6時頃気温を測り、マイナス25℃〜30℃なら花火が一発、一時間遅れ。マイナス30℃を超えるときは花火が2発上がって、その日学校はお休みなんて冗談みたいな仕組みがあったことを記憶しています(今でもあるそうです)。
こんな日遠くから歩いて登校する生徒は大変。
20分かかってやっと学校にたどり着く頃には、眉毛は霜で真っ白、耳はほとんど凍傷といって良い状態。
しばれた耳を折り曲げると、「ぎゅう 」なんてみょうな音がしたりして。
それでも学校を休む子がいなかったというのですから、昔の子はよほど我慢強かったんでしょうね。

■「牛乳しばらかしちゃった」
「しばらかす」は「しばれる」 の能動態であります。
意図して「しばらかした」のではなく、そのつもりがないのに不可抗力的にしばれてしまった場合でも、こんな言い方をします。
「牛乳しばれちゃった」 じゃなんですね。
「牛乳しばらかしちゃった」 という表現には「ほっとけばしばれることがわかっていながら、不注意によってしばれてしまった。悪いのは私です」 的懺悔のニュアンスが含まれるのです。
これは「見らさる=その意志はないのに自然と見てしまう」 「しらさる=その意志はないのについしてしまう」などの意味を持つ、「らさる」表現のいい加減な性格(「書かさる」の項参照)とは対照的。
道産子は「責任逃れ的他力本願力」を持つ一方、不可抗力的な出来事に対して、自ら「自分が悪うございました」と告白する素直さ(私はこれを「懺悔力」と呼んでいる)も持ち合わせているのであります。
なんたって奥が深いのだよ、道産子は。

■NHK某アナウンサー氏の話によると、この言葉の語源は「柴割れる」だとのこと。
あまりの寒さに柴の水分が凍結して、「柴が割れる」状態になることから生まれたことばなのだそう。

柴も割れるほどの極寒気温って、いったいどんななの?
ほらね、 ますます興味深いでしょう?
あなたも一度くらいは体験してみたいと思いません?
刺さるほどの寒さに 「しびれ」て、一気にM男(M嬢でも良い)となってしまうこと請け合いですぞ。

新シリーズ よく使う北海道弁詳説
−北海道弁をより深く知りたい方のために−

@うるかす
Aあずましい
B書かさる
Cゴミを投げる
Dげっぱ
Eこわい
F手袋をはく
Gはんかくさい
Hばくる
Iいいふりこきのがんべたかり
Jおだつ
Kがおる
Lおばんでした
Mいづ(ず)い
Nしばれる
O(へ)なまずるい
Pなんもなんも
Qなまら
Rあずる

伏田良のお笑い北海道方言辞典


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