運動療法


運動をするためには、エネルギーが必要です。つまり筋肉を働かせるための燃料として、血液中のブドウ糖(血糖)が必要となるのです。したがって、運動すると、血液中の余ったブドウ糖が筋肉の細胞内に取り込まれて、この結果血糖値の下降をきたすのです。糖尿病の運動療法の基本的なことはここにあります。


★運動療法の効果とは?
ブドウ糖が、筋肉などの細胞の膜を通過して、細胞の中にはいるためには、ある種のタンパク質(GLUT4)が必要です。
健常者では、食事によって血糖値が上がると、それに見合ったインスリンが膵臓から分泌されます。このインスリンが、細胞にあるインスリン受容体と結合すると、ブドウ糖を細胞内に取り込む命令が出されます。この命令を受けて、細胞内部にあるGLUT4が細胞の表面に出てきて、血液中のブドウ糖を細胞内に取り込んでいるのです(下図)。
しかし、糖尿病の状態では、インスリンの働きが悪いため、インスリン受容体を介した命令がうまく伝わらず、このGLUT4が細胞の表面に出てこられません。しかし、運動をすると筋肉の収縮そのものが刺激となって、インスリンの働きが多少悪くても(インスリン受容体からの命令を介さずとも)、細胞の表面に出てくるGLUT4の数が増えてきます。また、運動を続けるうちに、細胞の中にあるGLUT4の総量も増えてきますので、血糖の取り込みが多くなるわけです。




★どのような運動をどの位?
●運動の種類は、動的で全身を使う有酸素運動(早足、ジョギング、水泳、サイクリングなど)! : 糖尿病の運動療法の主な目的は、低下しているインスリンの効き目を良くすることにあります。運動によりインスリンの働きが良くなる部位は、運動した部分の筋肉に限られます。したがって、できるだけ多くの部位を動かすような全身運動がお勧めです。しかも、ブドウ糖を燃料としてエネルギーに変え、同時に脂肪まで燃やそうとしたら、十分酸素が必要です。酸素をあまり吸い込まない短距離走や瞬発的な動きではなく、ゆっくりと酸素を吸い込みながら全身を使うジョギングや歩行、水泳などが良いでしょう。 

●運動量は、1日平均150キロカロリー(1週間あたり1050キロカロリー)を目標に!
150キロカロリーの運動量
●歩行(80m/分):30〜40分
●自転車(平地):30〜40分
●軽いジョギング:20分
●歩くスキー:20分
●テニス:20分
●なわとび:10分
●水泳(平泳ぎ):10分

●運動療法の注意点
(1)血糖値は食後1時間から1時間半位でピークに達します。食後1時間くらいに運動を開始すると、高くなる血糖を抑えられます。
(2)糖に対する運動療法の効果は、およそ48時間位持続するといわれています。1日おき、あるいは週3回などから始めてみるのも良いでしょう。
(3)血糖コントロールが極端に悪い場合(血糖250mg/dl以上または尿中ケトン体が陽性のとき)、高血圧(最高血圧180mmHg以上)、眼底出血がある場合、腎臓機能の低下がある場合など、運動により急性の合併症を起こすことがあり、運動療法を禁止したり制限した方がよい場合があります。運動療法開始前には、主治医と良く相談することが大切です。







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