★コロンボの常用薬 ★

「コレステロールの数値を下げる薬だ。あたしも飲んでる。310から220に減ったよ。医者から食前に飲むように言われてるんだけど、いつも飲み忘れちまってね・・・・。 ふーん、あたしと同じ悩みをかかえてたの」。
被害者の胸ポケットに入っていた白い錠剤を見て、刑事コロンボが言った言葉である。この薬が必ず食前に飲むものであることから、駐車場で殺された被害者がこれから食事に行くところだったという推理につながるポイントである。そして、この「310から220」という数値が、高脂血症(高コレステロール血症)の診断・治療において重要な意味を持っていることも、当然コロンボは知っていたのであろう。


世界地図をひろげ、富良野からまっすぐ東に線を引きアメリカ大陸を横断すると、合衆国東海岸ボストン郊外に、人口をほぼ富良野市と同じくするフラミンガム市がある。このフラミンガム市で、1949年にある計画がスタートした。
無作為に選ばれた市民とボランティア約5000人を定期的に検診し、経過観察中に発症した循環器疾患を調べ、その疾患の背景因子を探ることを目的とした研究である。
この結果、心臓自体を養う冠動脈の動脈硬化が原因となる虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)では、高血圧・高コレステロール血症・喫煙が大きな危険因子となることが判明した。


このいわゆるフラミンガム・スタディで、コレステロールと虚血性心疾患の関係を見ると、血中コレステロール値が150(mg/dl)以下では冠動脈疾患が発症せず、200を越えると急激に発症リスクが増大することが分かった。
つまり200→250→300と上昇するにつれ、虚血性心疾患(加えて脳血管障害も)の発生頻度は加速度的に増大し、300以上となると10〜15人に1人は罹患するといった統計的数値がでたのである。
その後、世界各地で同様な研究が行われ、ほぼ同等の結果が得られている。
これらの事実から、現在コレステロール値220以上を治療の対象として、虚血性心疾患の発生を予防する目的で、この値を食事療法あるいは内服治療の開始基準としている。


こんなことからコロンボの言葉の意味が何とか分かって頂けると思う。
220という数字は、高コレステロール血症の患者さんにとって大きな意味を持つ数値なのである。
病院で医者に「コレステロールは今日、220以下ですね」と言われると、ほっとする一瞬であるのかもしれない。


ご馳走を勧められて、「いや、コレステロールがふえるんで・・・・・」とコロンボ。
内服薬のほかに食事にも随分気を使っているようである。
これで葉巻もやめられたら・・・医者の言いそうな余計なことである。  


*刑事コロンボ「殺人ゲーム」
W.リンク、R.レビンソン:(小林 恵・奥 裕訳)、二見書房




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