★ER★

確か100年以上の歴史がある医学雑誌のThe New England Journal of Medicine誌*に面白い論文が載っていた。一部を紹介しよう。


テレビ番組における心肺蘇生法(奇跡と誤解)というのがその論文の題である。日本でも放映されていたER、シカゴ・ホープと未放映だと思うが Rescure 911 のテレビ3番組を観ての検討である。何を研究したかというと、各テレビ番組の中で行われた心肺蘇生法の全てを確認して、心停止の原因、患者の統計学的特徴、その基礎疾患およびその後の経過などである。その結果、テレビ放映97回の間に、心肺蘇生法(CPR)の場面が60回あり、そのうちERでは31回、シカゴ・ホープでは11回、Rescure 911 では18回であったとのこと。また、心停止の原因はその大部分が外傷性のもので、最初から心臓疾患に由来するものは28%のみであり、心停止から回復が得られたのが患者の75%にみられ、67%は生存して退院したとのことであった。そして結論では、テレビ番組におけるCPRの生存率が、医学文献上最も楽観的にみている数値より有意に高く、CPRによる回復率が患者に非現実的な印象を与えかねず、医師が患者と家族にCPRについて説明する際に、テレビによって得られた誤った認識について注意を要すると結んでいる。


本当にそうなのだろうか? NHK衛星放送で放映されていた「ER」は、マイクル・クライトンが原作・監修ということもあってよく観ていた。カメラ1台が、搬送されてきた患者を入り口から処置室まで1シーンで追いかける。それと交差するようにもう1台のカメラが、今や医者が患者の胸にメスを入れようとする隣の部屋を覗き込む...といったように恰もER(救急救命治療室)の現場にいるような雰囲気になってしまう。これは医療スタッフでなくともそうであろう。場面転換のテンポが良く、つい引き込まれてしまう。一般の人が、現実の世界と置き換えてしまうのも無理がないと思うし、自分の家族が倒れたら、ERのような施設を持って医療機関に運んでもらおうと考えるのも当然である。
だから...本当にそうなんだろう! ただERでは、CPRの甲斐なく死の転帰をとる場面も多く、ドラマの流れから行くとむしろこちらの方が、強烈な印象を与える。75%より25%である。論文の著者が心配するほどのことでもないかと個人的には考えるが、やはり医療訴訟の多い米国では大切なことなのだろう。
医療を扱ったテレビ番組は比較的観ているような気がする。いつも医者の目で見てしまうので、どこかで「あらさがし」をしてしまう傾向がある。横にいる子供たちは、ブツブツ言うのをいつも迷惑そうに聞いている。比較的突拍子もないようなことには出会わなくなってきたが、論文にでてきたような見方もあるのかなと少し感心した次第である。ERは再放送もしているし、ビデオレンタルもあるようである。ちょっと見方を変えるのも面白いかもしれない。


*Susan J. Diem et al:Cardiopulmonary Resuscitaition on Television. New England Journal of Medicine 1996;334:1578-1582



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