日本の出版界で、いつの頃からか「4Fミステリー」という言葉が、キーワードとなっているようである。4FのFはFemale(女性)で 、作者が女性で、主人公も女性、さらに訳者も女性で、その読者は女性が多いミステリーという意味のようである。どうも「売れる本」の条件のひとつにもなっているらしい。パトリシア・コーンウェルの検屍官シリーズを読んでいるうちに、3Fが多いというのは気付いてきていたが、最後の女性読者が多いということは知らなかった。本棚から少し取り出して見ると、P・D・ジェイムズ「女に向かない職業」(小泉喜美子訳)、サラ・パレツキー「ダウンタウン・シスター」(山本やよい訳)、スー・グラフトンの”キンジー・ミルホーン”シリーズ(嵯峨静江訳)、そしてコーンウェルの”ケイ・スカーペッタ”シリーズ(相原真理子訳)などがそれらしい。全て女性読者が多いとは思えないが、P・D・ジェイムズを除き他の本の主人公が自立した女性(離婚歴もあり)であり、その颯爽とした描写から女性ファンが拍手喝采を送るのも頷けるような気もする。
病気のことで4Fといえば、思い出すのが胆石である。学生の時講義で初めて聞いたのだが、胆石が4Fに多いというのである。Female、Forty、FattyそしてFairである。胆石保有者が、40歳代(forty)から明らかに増加し、しかも女性(female)で肥満(forty)の人に多く、そして美人(Fair)である...という。最後のfairは、何ともコメントできないが、その他の3Fに関しては統計学的にも明らかである。学生の頃の講義では、最後のfairのところで皆に受けていた記憶もあるが、看護学校の授業や富良野市でここ数年行われているスマート教室(肥満者を対象とした講義と実践)で同じ話をした際には、あまり反応もなく、女性の前では慎むべき話題かと反省した次第である。
一つだけ文献を紹介しよう。Malcolmら*によると34歳〜59歳の女性約9万人を4年間経過観察した結果、この間に433人が胆石の発生により胆嚢摘出術を受け、179人に胆石発作(非手術例)が認められたとのこと。さらにこの発生例を検討すると、高度肥満群では、肥満(−)の群に比べ約6倍の胆石危険率があったとのことである。現在、胆石は腹部超音波検査で容易に診断できるので、肥満そして美人の40歳以降の女性に限らず、思い当たる人は是非検査をお勧めする。
記憶違いだったのであろうか、内科の教科書を今一度確かめてみたら、欧米では胆石は5Fの人に多いとの記載がある。上記の4Fにfecund(多産)が加わっている。しかし、ここにもfairの記載があるので、強ち冗談でもないだろう。これだけマス・メディアが発達し、作家もテレビや写真に登場する機会が多く見られる。そのうち4Fにfairが加わり5Fミステリーが売れ筋になるだろう...と書いたら、パレツキーを筆頭にフェミニズム的記載の多い上記作者方に袋叩きにされそうだが、どこかの出版社の片隅でそのような話をしているのも想像できるような気がする。4Fミステリーといわれるものも、よく読んでいるのでお許し頂きたい。
*Malcolm KM et al : Weight,diet,and the risk of symptomatic gallstones in middle-aged women.
New England Journal of Medicine 321 : 563-569,1989 |