★A型の女★

 
 マイケル・Z・リューインの「A型の女」を読んでいて思い出した話。
 
 「A型の女の人は、心筋梗塞になりやすいんですって?」
ある日の外来での質問である。確か相前後して、他の患者さんにも同じような質問を受けた記憶があるので、テレビか何かで話題になったのだろう。もちろん、この質問の患者さんは、女性でそしてA型であった。

このような場合、多くの人は、この「A型」を血液型と捉えるであろう。当然である。しかし、医学的に話を進めるとき、この「A型」はその人の行動パターンとして解釈するのが妥当である。ただ、血液型と混同されやすいため、「タイプA」と表現するのが常であるが。別に「A型」と言っても構わないが、血液型と性格の話題が雑談の中にも出てくるような昨今では、やはり「タイプA」と呼んだ方が良いだろう。



 40年ほど前、米国の循環器内科医師フリードマンらは、心臓病外来で待合室イスの前の部分が異常に早くすり切れる状況を見て、ある考えを思いついた。注意深く観察してみると、案の定心臓病の患者は常にイライラしたような状態で、直ちに立ち上がれるように浅く腰掛けている人が多く、このため前の部分がすり切れやすいと判断したのである。このことから、心臓病の患者では、特徴的な性格・行動パターンがあるのではないかと検討し、1959年にタイプA行動パターンが虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)の危険因子であると報告している。
それでは、タイプAの行動パターンには、どのような特徴があるのだろうか?
列挙してみると、
 (1)非常に競争心が強く、目標達成欲求も強い
 (2)攻撃的で、敵意を持ちやすい
 (3) せっかちで落ち着きに欠け、いらいらしやすい
 (4)責任感が旺盛で、多くの仕事に没頭し、 いつも時間に追われている
 (5)他人からの高い評価を切望し、昇進願望が強い
 (6)用心深く、常に緊張気味
 (7)語気の強い話し方をする
というような行動パターンを示す特徴があり、常に短時間で多くのことを成し遂げようと精力的に活動し、必要とあれば他人に対抗してまでも続ける人に認められる。人間の行動パターンは、程度の差はあるにせよ大きく二つに分けられ、一方のタイプBは、タイプAと逆であると考えると良いといわれている。


 
  フリードマンらの追跡調査によると、約3000人を対象に8年間実施した結果、タイプAの人は、タイプBに比べ心筋梗塞の発症率、死亡率ともに2倍以上とのことである。また、タイプAの人の行動修正を試みると、心筋梗塞の再発率が50%近く減少したとの報告もある。行動修正するには、日常生活リズム(食べる、話す、歩く、仕事するなど)を意識的に遅くすることから始めるのが一番であろう。このタイプA行動パターンが問題となるのは、心筋梗塞や過労死などの突然死が多いばかりでなく、種々のストレス性疾患も発症しやすいということであるので、思い当たる人は注意が必要である。タイプAは性格の問題でなく、習慣や行動様式であるので、修正可能だということを忘れてはいけない。



 小渕首相が、脳梗塞で倒れ、亡くなられたという記憶は新しい。心房細動が原因だとという話もある。心房細動とは、心臓の筋肉がバラバラに収縮・弛緩する状態で、心臓全体の収縮力が失われる状態である。この場合、心房の中に血栓(血の塊)を生じやすく、これが剥がれて脳に運ばれて動脈につまると塞栓症(脳梗塞)となるのである。発作性の心房細動は、ストレスや過労で誘発されやすい。政治家に多いと思われる(?)タイプA行動型とはちょいと違うかなと思っていた小渕さんでも、やはり種々のストレス要因が重なっていたのでは(?)と考えてしまう。
因みに、血液型で話をすると、小渕元首相はA型で、国会議員全体と自由党は統計的にAB型が多く、A型が少ないとのことである。こんなことを書いてしまうから、いつも混乱させてしまうのだが、行動パターンにAB型はない(念のため)。



  「A型の女の人は、心筋梗塞になりやすいんですって?」
正しくもあり、誤りでもあるが、A型のの人には多くない。



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