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密かに内蔵を侵蝕
恐い『かくれ肥満』への注意

(院内誌「のいえす」創刊号特集記事抜粋)



 肥満が生活習慣病などの誘因になっていることは今さらの常識です。同じ肥満にも「悪性肥満」と「良性肥満」があるのをご存知でしたか? 悪性の肥満は病気を合併しやすいタイプであり、良性の肥満は病気になりにくい肥満です。その悪性肥満の最たるものが「内臓脂肪型肥満」です。このタイプは『かくれ肥満』という形をとりやすく、太って見えないため見過ごし、いつの間にか病気を進行させて、手遅れの事態を招く恐怖の肥満で、現在じわりと増えつつあります。
 

良性肥満と悪性肥満の見分け方
 肥満とは、体重が多いことではなく、身体に脂肪が過剰に蓄積した状態を言います。同じ体重でも、筋肉や骨の量が多い人と少ない人がいます。さらに脂肪分と水分を取り違えている場合をよく見かけます。分かっているようで認識の不足しているのが「肥満」だと言えましょう。
 例えば、お風呂やサウナでタップリと汗をかいて体重計に乗ると、1キロや2キロはすぐに体重が落ちます。体内の水分量が減ったためによるものです。体内に蓄積されている脂肪は全く減ってはいないのです。つまり、一時的にしても「ダイエットが成功した」と喜ぶわけにはいきません。エステサロンなどで何時間単位で体重が落ちるのも、多くが体内の水分を出す方法が採られているからのようです。脂肪の”もみ出し”など不可能と認識する必要があります。
 ところが余分な脂肪でも、それが身体のどこに分布するかによって悪性の肥満と、それほど悪さをしない良性の肥満に、最近の肥満医学では区別されるようになりました。「悪性肥満」と「良性肥満」には、いく通りかの分け方があります。
 つまり悪性肥満は、内臓脂肪型肥満=上半身肥満=腹部肥満=リンゴ型肥満=男性型肥満となります。しかし必ずしもイコールで横並びではなく、例えば上半身肥満の3分の1には良性の皮下脂肪型肥満も混在しています。結局、最大の悪玉は内蔵脂肪型肥満なのです。
 良性肥満は、皮下脂肪型肥満=下半身肥満=臀部・大腿部肥満=西洋ナシ型肥満であり、どちらかというと女性によく見られるタイプの肥満です。
悪性肥満
(合併症の可能性が高い)
内臓脂肪型肥満
上半身肥満
腹部肥満
リンゴ型肥満
男性型肥満
良性肥満
(合併症の可能性は低い)
皮下脂肪型肥満
下半身肥満
臀部・大腿部肥満
西洋ナシ型肥満
女性型肥満

 現在、医学的な分類判定法は「内臓脂肪型」と「皮下脂肪型」にほぼ集約されています。残りの分け方は、あくまで外見上の目安というところです。内蔵型肥満皮下脂肪型かの判定は、腹部CTスキャン検査で確定され、外見では分かりません。それ以外の分け方は、CTスキャンがなかった時代の歴史的な分類法だとも言えますが、ある程度の判断材料にはなります。
 体重から判定する肥満度の算出方法はいろいろあります。そのいずれにも「ふつう」とか「やせ」と判定された中に10%前後の『かくれ肥満』が潜んでいるのです。つまり10人に1人は、「自分は太っていない」と安心していても、実は立派に肥満が進行していたということです。
 『かくれ肥満』は「内臓脂肪型肥満」に現れやすい肥満形式です。もう一方の「皮下脂肪型肥満」は、皮膚に張り付いて脂肪が蓄積するので、外見上「太っている」とわかりやすいのです。「内臓脂肪型」は腹部内臓周囲の空間(腹腔内)に脂肪が蓄積するというものですから、、膨らみが出るまでに幾分の空間的な余裕もあり、もちろん例外もありますが一見してしばらくは普通の体型を保つことになります。また、「皮下脂肪型」は腹部のほか顎のしたや腕、あるいは下半身などにも脂肪が蓄積しやすく、明らかな肥満の体型をとります。
 このところ『かくれ肥満』の増加で心配されているのは、男性では事務系の仕事をしている中年、女性では更年期以降、そして年齢に関係なくダイエットに何回も挑戦したという人です。更年期以前の女性に悪性肥満が少ない理由は女性ホルモンの作用だとも言われています。
 中年男性では、昔からの細身の体型のまま腹の周りだけポッチャリと脂肪がついたような人、これが典型的な内臓脂肪型『かくれ肥満』です。こういうタイプは、中年に限らず若い男性にも割合見かけるようになりました。若い女性にも『かくれ肥満』があります。あまり必要としないダイエットに何回も取り組み、体重減と逆戻りの反復を繰り返した結果です。いったん減った体重が逆戻りするときには、筋肉は戻らず主に脂肪だけが増えます。この反復で、少しずつ内臓周辺や皮下に脂肪が蓄積し、『かくれ肥満』は進行していくのです。

なぜ「悪性」と呼ばれるのか?
 以前から、狭心症や心筋梗塞を引き起こすものとして「死の4重奏」という4つの病態が恐れられていました。この中に悪性肥満である上半身肥満、あるいはリンゴ型肥満がメンバーのトップとして出演しているのです。つまりその4人とは、(1)上半身肥満、(2)高血圧、(3)糖尿病、(4)高脂血症です。
 上半身肥満か下半身肥満かの判定は「ウェスト÷ヒップ」で計り、日本人の男性では0.95、女性では0.8を越えれば明らかに上半身肥満とされています。上半身肥満は心臓病だけでなく、糖尿病の発症率も高いことが分かっています。
 しかし、同じ上半身肥満でも「内臓脂肪型」と「皮下脂肪型」を比較してみると、皮下脂肪型はそれほど悪さをしないことが分かってきました。悪いのは内臓脂肪型です。しかも、肥満そのものは「動脈硬化」に関連する度合いがそれほど強くないという疫学的な研究報告も出されています。動脈硬化を促進しているものは、肥満に伴う糖尿病や高血圧だというのです。単に太っているだけの人は少しは安心できるかも知れません。でも分かりません。死の4重奏は、特に初期では、静かに深く潜行しているのですから。
 こうしてみると、以前から言われていた肥満が呼び込む生活習慣病の数々は、「内臓脂肪型」に限って強い関連性があるということが判明したわけです。コレステロール、中性脂肪、空腹時の血糖値、血圧値、心臓の拍動障害などに関わっていることが報告されています。まさに悪性肥満の最たるものが「内臓脂肪型肥満」で、重要な内臓器官を侵蝕しているのです。その中でも『かくれ肥満』は、健康的な体型に安心している人々を、急性心筋梗塞のような怖い病気を突発的に発症させます。まさに言い過ぎではなく”死神”なのです。
 正常体重の人を対象にした調査でも、内臓脂肪の蓄積が糖尿病、高血圧、心臓病などと関連し、「内臓脂肪症候群」とも呼ばれる動脈硬化症の病気を引き起こしやすいと考えられています。内臓脂肪の蓄積は、肥満の有無に関わらず動脈硬化発症と促進に重要なカギを握っているのです。このように『かくれ肥満』には細心に注意し、太っている人はもちろん、このところ何となく腹が出てきたというような人、更年期以降の女性などは、チェックの必要があるようです。



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