FESTIV
                     

北海へそ祭り

 

祭りは全ての「絆」を確かめる日でもあるのだ。

 7月28・29日の二日間、子供から大人まで、そして観光客をも巻き込んで富良野が熱く燃え、爆発する。夕闇迫る会場に、まず登場するのは子供へそ踊り。小さなおなかの図腹と踊るしぐさが、たまらなく愛くるしい。やがて午後7時、祭りのメインは何といっても「北海へそ踊り大会」。1周約800メートルの会場を埋める踊り手は約3千5百人。沿道にも黒山の見物人がつめかけ、“ハアーまんなか、まんなかのどまんなかヨ”の曲に乗って踊り手の一団が繰り出すと祭りは一気にピークを迎える。  怒った顔、笑った顔、泣いた顔....図腹はどれもが個性的でユーモラス。踊り手の一挙手一投足でさまざまに表情が変わる。その絶妙な動きは思わず知らず見物客の笑いを誘わずにおかない。見物客のどの顔にも笑いがあふれている。サンバのリズムにも似た弥栄太鼓やカミナリ軍団の打ち出す響きが心を揺さぶる。延々と続く踊りの列を見ているうちに何とも言えない感動が沸き上がってくる。  へそは親と子をつなぐ絆である。「北海へそ祭り」は、中心標に誇りをもつ富良野市民が、親と子の絆、市民同士の絆を確かめる日でもある。それこそが、この祭りの根底に流れている精神なのだ。笑っているうちにジーンと胸に迫ってくるのは実にそのせいなのかもしれない。汗あり、涙あり、笑いがある。北の国、富良野の夏が一層熱くなる。

ハラハラパフォーマンスなど盛り沢山のプログラム

 夜の部の「へそ踊り大会」には図腹踊りの人々ばかりでなく、浴衣で踊る団体、ライダー軍団など、さまざまな人々が参加し、熱狂群舞する。そして、その熱気はけっして夜の部ばかりではない。日中にも盛沢山の“へそ”にちなんだプログラムが展開される。  特設舞台を中心にした祭り広場は歩行者天国。この祭り会場をゴールにした「ふらのへそマラソン大会」をはじめ、賞金・賞品・参加賞がもらえるプログラムも数多くある。  力自慢には「北海へそ力綱引大会」。1チーム7名以内で一般の部、レデイースの部、選抜の部がある。「女腕相撲大会」は華麗な女の戦いの火花?が散る。知力と体力と時の運が左右する「大ジャンケンポン大会」は米30kgと豪華景品が当たる。  子供たちが活躍できる場面もいっぱい。「ハラハラパフォーマンス・パート。」は爆笑の連続。始まる前から陣取り合戦があるほどの人気。市街からのエントリーもOK。当日参加が可能なイベントもあるが、早めに申し込みをしておかないと出場できないものもあるので注意。詳細はへそ祭り実行委員会《市役所観光企業課エ0167-23-3521》に問い合わせてほしい。7月28・29日が祭りの本番だが、27日には祭り広場で前夜祭が行われる。ビールパーテイー、ふらのPRレデイー発表会、賞金も大幅にアップしたハラハラパフォーマンス・パート氈i図腹書きコンテスト)、パート(図腹踊りコンテスト)、へそピクニックなどのほか、女みこし、富良野堤灯へそみこしも登場する。この前夜祭も見逃せない魅力が満載だ。だから、へそ祭りをめあてにするなら、実質三日間の滞在予定を組みたいところ。早めに計画を立てて、富良野の魅力にじっくりと触れる旅にしてほしい。

 ■日程 7月28・29日
 ■場所 新相生通り商店街
 ■問い合わせ先 北海へそ祭り実行委員会
   (市役所観光企業課エ0167-23-3521)

市民憲章から始まった「へそ」物語り

 昭和44年7月、富良野市民憲章が制定された。その中に「私たちは北海道の中心標の立つ富良野市民です」の一文がある。  物にはすべて中心があり、人体の中心はへそ。だから、北海道の中心標は、いわば北海道のへそである。これを郷土芸能に具象して将来の観光や商業の発展に結び付ける方法はないものか...。誰いうともなしに、その発想は波紋を広げていくことになる。つまり、「北海へそ祭り」のすべては、この市民憲章から始まったのだ。  そして、この祭りの誕生と発展の歴史を語るときに欠かせないのが操上秀峰さん、森田藤八さん、横尾栄治朗さんの三氏の存在である。(操上さん、横尾さんはすでに故人)この三人の献身的な努力と情熱が注がれ、北海へそ祭りの原形が作られていった。その意気込みは「ヘソキチ」「ヘソ三羽ガラス」と呼称されるほどであった。  祭りの主役は、何といっても珍奇絶妙な図腹踊り。これは、「祭りにはユニークさが必要だ。“へそ”を活かした踊りをやろう」と、すずらん商店街の皆さんが考え出したもの。しかし、初回は踊り手を集めるのが一苦労で、嫌がる若者たちをなだめたり、すかしたりして、やっと11人を踊らせたというエピソードが伝えられている。  北海へそ祭りが現在のような隆盛を見せるまでには、さらに多くの人々の協力と汗が必要だったのはいうまでもないが、かつての「へそ三羽ガラス」の初期の苦労があったからこそ、2日間で110団体、約5千人の踊り手と大勢の観光客で賑わう、夏の北海道を代表する祭りとして広く知られるようになったのである。

開催日にも“こだわり”が。

 珍奇絶妙、ユニーク、あふれるユーモア.....など、数々の形容詞で称賛される北海へそ祭りだが、実は開拓時代からの崇高な精神が織り込まれているのだ。  昼なお暗い原始林に挑むとき、へその下に力を入れて一本一本の樹木を切り倒し、耕していかなければならなかった。その逞しい開拓精神を讃え創案されたもので、現在は@正調北海へそ踊りAパレード用へそ踊りB図腹踊りC舞台踊りの4種類があり、いまや富良野市の伝統文化として定着し、息づいている。  北海へそ祭りには数々の“こだわり”がある。開催日もそのひとつ。道内各地にも、さまざまな新しいイベントや祭りが生まれているが、大抵の開催日は土曜・日曜開催という具合に流動的なのだ。へそ祭りも当初は8月15日開催であったが、第3回以降は7月28・29日と決めている。それは「中心標」「へそ」「踊り」という、この祭りの文化的特性、風土的な特性、そして、れっきとしたへそ神社(北真神社)の例大祭としての自負と誇りにほかならない。また、例年7月のこの2日間は日中多少小雨が降ったことはあるが、奇妙に踊り大会の時間帯には、雨にあったことがない。だから、人を集めるには土、日曜開催を、という声もあるが、変更する気はさらさら無いのである。