チューブの「あー夏休み」を酔っぱらった勢いで、思いっきりシャウトしてしまい、のどが痛い。久しぶりのカラオケで調子に乗りすぎた。 照れ隠しに「五十歳を過ぎて、こんなことやっていたらダメだよね」と一緒に飲んでいた若い人に言ったら、「小田島さんはそのままでいてください。それが似合ってます!」と。ほめられたような、けなされたような…。 「夏休み」。この響きには、特別な感慨がある。いつも思い出すのは、小学生の時のある夏。商売をやっている家なので、よその子のように家族いっしょに旅行なんてことはめったになかった。その年も父親は仕事で行けなかったが、母と姉、妹、私の四人で増毛へ海水浴に行くことになった。 母親が運転する車は、荷台に幌が付いているオンボロ軽トラック。父親は荷台に合わせて板を敷きつめ、その上にマットをのせてくれた。「簡易ベッド」の出来上がりだ。デコボコの長い道のりだったが、私たち子供は荷台ベッドの上で快適なドライブだった。 たった一泊二日。それも富良野から間近の海水浴場への旅行だったが、私たちは楽しかった。親に感謝もした。 今の子たちはディズニーランドや沖縄、ハワイにもはしゃぎながら出かけている。 ちょっと複雑な気持ちもあるが、それはそれでいいのだろう。どちらにしても、子供の時にしかつくれない大切な思い出なのだから。 |