[オフィスFURANO物語] no.8
[これからのオフィスFURANO]
Santa Furano(サンタ・フラノ)企画
竹山圭一という身体の大きい、声の大きい、いつも元気な人がいる。今年独立して「ベアーズ・カンパニー」という会社を設立して、張り切っている。竹山さんとの出会いは、もう7年は経っていると思うが、独立する前の会社にいた時だった。旅行会社のカタログ用に那須野さんのフィルムを貸したのだ。それから、何年間か空白があった。
ある日突然、電話がかかってきた。「ぼくの知っているピアニストが那須野さんの写真集を見て感動してしまって、是非一度お目にかかって、出来れば一緒に仕事がしたいと言っているが、どうですか?」。どうですかと言われても、答えようがなく、とにかく東京で、会うことになった。
結果的には、まだその仕事は形になっていないが、それからと言うもの上京する度に飲んだり、食べたり、笑ったり、歌ったり、している。一応、仕事仲間という関係にはなると思うけれど、再会してから、一度も仕事はしていない。しかし、会っているときは勿論のこと、定期的にかけたり、かかってくる電話の話はいつも仕事のことなのだ。イヤ、厳密にいうと、仕事というより、夢に近い。「いつか、こんな夢のような仕事を実現したいねぇ」。
このSanta Furano企画は、竹山さんと長電話しているうちに、ぼくの頭の中で具体的にイメージ出来たものなのだ。クリスマスやサンタクロースを富良野と結び付けて考えようということは、以前からあったが、それはまだボワァーとした感じしかなかった。この時は「具体的」なイメージが浮かんだ。つまり、スタートするキッカケが見えたのだ。
早速、那須野さんに電話をかけた。「那須野さん、次のテーマ、夢のときの次のテーマ、決まったよ。クリスマス、クリスマス」、受話器の向こうから曖昧な笑いが返ってきた。「今年のクリスマスはラップランドに行くよ、ラップランドに行く前にパリやロンドンに寄って、クリスマスの飾り付けも撮ってこようよ」「寒そうだねぇ。でもおもしろそうだねぇ」那須野さんも何かが浮かんだのだろう、仕事を引き受ける時のいつもの明るさで、「社長、行きましょう、行きましょう」と、乗ってきた。
次に、まり子に電話。「社長は気を悪くするかもしれないけど、クリスマスのことは前に私が言ったじゃないの。クリスマスに関する本や資料は沢山集めてあるわ」。物事が進むときというのはこういうものだ。
しかし、まり子からクリスマスの話を聞かされていたとは、なぁ。

ラツプランドを出発点として世界中をターゲットに、クリスマスのイメージを演出する写真を那須野さんに撮ってもらう。ぼくやオフィスFURANOのスタッフはクリスマスのイメージに合うオリジナル商品を企画するとともに、クリスマスのイメージに合う世界の雑貨を輸入し、一年中展示販売出来る建物、Santa Furano館を建てる。
売り方としては、店頭販売はもちろんのこと、夏に大勢来る観光客に対する通信販売も考える。つまり、クリスマスイヴの日、恋人や友達、兄弟、両親に富良野から素敵なクリスマスプレゼントが届けられるわけだ。
展開としては、葉祥明さん、浜田などにも参加してもらい、写真集、絵本、ビデオ、CDなどを総合的に進め、富良野とクリスマス、サンタクロースを結び付けるイメージをより鮮明にする。もちろん、ぼくの知っている他のすべての人にも話をして、このキーワードで出来ると思ったことは、どんどんやってもらおうと思っている。そして、それがぼくの最大の仕事だと思っている。
実際に、もう何人かの人達には話をした。とくに、祥明さん、葉山さん、浜田にはタイミングよく会えて、すでに協力を約束してもらっている。実は、「Santa Furano」のネーミングは祥明さんがしてくれたものなのだ。この三人の参加は力強い。そして、もう一人強力な協力者がいる。いや、協力をお願いしている人がいる。最近お世話になったスカンジナビア政府観光局の奈良伊久子さんだ。サンタクロースと言えば北欧が本場だ。この企画において、その北欧に関してのエキスパートの奈良さんの力は大きいと思う。

まずは、小さなコーナーでもいいからフォーラムフラノで始めようと、まり子は商品の買付けと勉強のために、姉のいるアムステルダムに飛んだ。企画が持ち上がって、まだ一ヵ月も経たないうちの暴挙である。
しかし、買付けと言ったって初めてのことだし、第一、何処にどんなものがあるのかだって知らないのだから、せいぜい見本程度のものだと高をくくっていた。そして、悪いことに、ぼくはまり子への勇気づけと景気づけのために「買って、買って、買いまくれッ!」なんてFAXまで流してしまった。
女は凄いもんだ。

予算どころか、この企画の漠然とした"感じ"しか決ってないのに、買って、買って、買いまくったッ!らしい。朝、会社に来たら、時差を乗り越えたFAXがアムステルダムから届いていた。
「守重の口座に、下記の金額を送って欲しい。この分は現金買いなので、立て替えて貰いました。クレジットカードで買えるものは、クレジットカードで買いました。残りの金額は、日本に帰ってから、すぐ払えばいいそうです」
一瞬、唖然とした。半端な額じゃないのだ。
「みんなで力を合わせて、売って、売って、売りまくればいいんだッ!」と、自分に言い聞かせて元気を回復するまでに、かなりの時間を要したが、取り敢えず、車検の期限が切れるために進めていた新車買い換えの話は、断った。
まり子が日本を立ったのが今年の9月の下旬、帰国したのが10月の下旬。すべての商品が富良野に届いたのが、11月の下旬。フォーラムフラノの飾り付けが終って、新ショップがオープンしたのが12月7日。企画を思い立ってから、三ヵ月しか経っていなかった。
このスピードの早さは、勿論まり子が奮闘した賜ではあるけれども、やはり、守重夫婦の強烈な協力のお陰だった。実は、守重さんはまり子が行く前から色々調べていて、行くところのスケジュールを、きちっと決めてくれていたらしい。終ってみると、守重さんは案内人兼、通訳兼、アドバイザー兼、運転手兼、梱包人兼、輸入手続き人兼、兼、兼、……、すべてをやってくれた。
守重さんは輸入に慣れてはいるけれど、さすがに「奇跡的だったねぇ」と言って、「これからの仕事に自信がついたよ」と、不敵に笑った。
今回の仕事は守重さんがアムステルダムにいなかったら、輸入出来る良い店を探せれなかったら、英語が話せれなかったら、手際よく手続きが出来なかったら、たら、たら、……、すべての「たら」が結集しなかったら、成り立たなかったはずだ。本当に、守重さん有難うございました。
世話になる時は、トコトンなるタイプのぼくは、これまたタイミング良くたまたま用事でアムステルダムから日本に帰ってきた"フラワーアーティスト"の姉にディスプレィをしてもらおうと、図々しくも、富良野に来てほしいと頼んだ。勿論、答えはOK。
まり子とフラワーアーティストは「あーでもない、こーでもない」と言いながら、約一週間、夜の12時近くまでせっせとディスプレィをしていた。その間、那須野さんは高橋と打ち合せながら、店内の飾り付けの写真やクリスマスのイメージ写真を撮っていた。

とにかく、企画は動き出した。目先のことに捕らわれずに気長にやっていくつもりだ。富良野とクリスマス、富良野とサンタクロース、このイメージの結び付きには、身震いする。興奮して、頭の中が色々な思いやアイデアでぐるぐる回る。
勢いで、少し大きなことを言わせてもらいます。
ぼくは、オフィスFURANOは、富良野から新しいクリスマスの形を創りたい!

FAIRY HILL(フェアリー ヒル)計画

この計画はまだ「夢」の段階である。FAIRYとは妖精、HILLとは丘。丘の上に存在する架空の街「FAIRY HILL」(フェアリー ヒル)を舞台に、色々な物語が生まれていく。フェアリーヒルは富良野のイメージとイギリスの小さな村のイメージを合わせたような感じの街、街というより村。1989年にイギリスに那須野さんと一緒に行った時に、浮かんだ企画だけれど、その原型は「フラニストの森」構想である。まず、初めにこの構想案を見てもらいます。

  • 名称:フラニストの森 
    ・富良野独自の新しい文化の創造と、その文化の発信基地としての森づくり

  • 趣旨
    フラニストの森は富良野を愛する人の森です。富良野は十勝岳連峰をはじめとする雄大な眺めの山々、母なる川空知川、麓郷、八幡丘、布礼別を中心とする丘陵地帯、東洋一の美林といわれる東大演習林、ロマンを誘うラベンダー畑などを有する、とても美しいところです。
    フラニストの森はこの富良野のすばらしい自然と協調しながら富良野独自の新しい文化を創造し、その文化を全国に発信して行きたいと思っています。
    具体的には、麓郷の森を一つのモデルに設定し、参考にしていきます。丸太や木材を使っての施設づくり、富良野と他地域の人と文化とモノの交流、定住する人と訪れる人とのバランスなどを考えながら進めたいと思います。
    富良野は今、好むと好まざるとに関わらずハイスピードで変貌しようとしています。おそらく富良野はじまって以来の試練の時だと思います。フラニストの森は富良野の現状の長所と短所を踏まえ、未来の夢とビジョンの一つの形として取り組みたいと考えています。

  • 内容
    フラニストの森の主要施設は、シンボル的な建物「フラニスト センター」、ギャラリー兼ホール「フォーレスト フォーラム」、ホテル兼寄宿舎「ホテル フラニスト」、コテージゾーン「フラニスト ビレッジ」、駐車場など。 
  • 詳細
    ・フラニスト センター
    フラニストの森のシンボル的な建物。本部オフィス、関係者の宿舎、喫茶、食堂、売店などの機能をもつ。また、ベランダが野外コンサートのステージにもなる。
    ・フォーレスト フォーラム
    常設のギャラリー。写真家、画家、イラストレーター、彫刻家、陶芸家、音楽家などの作品を展示。年に何回か企画展も開催する。また、コンサートホールとしての機能も持ち、主に、ジャズ、クラッシックの演奏会を開く。付属施設としてオフィス、デザインルーム、ミーティングルームがある。
    ・ホテル フラニスト
    フラニストの森では協力していただく、アーティストや先生によるゼミナールを開催する。その対象者である大学や専門学校の学生の宿泊施設と学習のための教室などの機能を持つ。通常は一般の人のホテルとして活用する。
    ・フラニスト ビレッジ
    フラニストの森のビレッジメンバーのコテージとその付属施設、広場から成っている。共同で使用する広場の付属施設として、炊事場、トイレ、シャワー室などがある。

    *ビレッジメンバー
     1.映像・演劇メンバー
     映画監督、脚本家、劇作家、ムービーカメラマン、俳優、ビデオ作家、プロデューサー、ディレクターなど。
     2.美術メンバー
     画家、彫刻家、写真家、陶芸家、書道家、ウッドクラフターなど。
     3.音楽メンバー
     演奏家、作曲家、作詞家、音楽エンジニアなど。
     4.文章家メンバー
     小説家、エッセイスイなど。
     5.クリエイティブメンバー
     コピーライター、デザイナーなど。
     6.ファッションメンバー
     ファッション、ヘアー、メイクデザイナー、スタイリストなど。
     7.マスコミメンバー
     出版社、新聞社、テレビ社関係者など。
     8.研究メンバー
     教師、大学教授、大学関係者など。
  • 運営
    株式会社フラニストの森が運営する。土地、フラニストセンター、フォーレストフォーラム、ホテルフラニスト、ビレッジ共有施設、駐車場は会社で所有する。フラニストビレッジのコテージはメンバーの所有とする。
  • 資金
    1.株主の出資金
    2.森の運営益(宿泊、喫茶、食堂、売店、ゼミナールなどの企画、イベントなど)、ビレッジコテージの地代、施設費、管理費、フォーラム収益など。
    3.フラニストの森の関係者による仕事での収益
    (株)フラニストの森が主導権を持って、関係している人達をプロデュースし収益を上げる。例、本の出版、講演、CM出演・制作、他地域でのイベントなど。
    4.企業とのタイアップによる協賛
    例、写真業界の会社によるフォーレストフォーラムのギャラリーへの出資、企業の保養所としてのホテルフラニストへの出資など。
    5.行政とのタイアップ、第三セクター方式による補助金

1987年にこの構想案を書いたのだから、もうかなりの月日が経っている。あの頃は「森林フェスティバル」の余韻がまだ残っていて、みんなで色々な構想について話し合っていた。元々、森林フェスティバルは、「ニングルの森林(もり)」を広大な国有林の中に建設するための、旗揚げ的な意味があって、当初はフェスティバルのことより、ニングルの森林構想の話で盛り上がっていた。
ニングルは先にも書いた通り、倉本先生創作の小人の物語で、理論社から本も出版されている。ニングルの森林はその本をバイブルに、先生をはじめぼくらのグループや関係各省の人達が力を合わせて建設しようとした、構想だった。
 森林フェスティバルは大成功を収めたのだけれど、その後色々な事情があって、森林建設は中断された格好になっている。
ぼくの「フラニストの森」構想は、この流れのなかで自分自身で勝手に考えたもので、あの時みんなで話し合われた「ニングルの森林」の構想とは直接関係はない。ただ、ぼくだったたら、こうしたい、という気持ちがフラニストの森を考えさせたのは、間違いない。 とにかく、ぼくはこの途方もない構想が頭から離れることはなかったが、もちろんリアリティを持ってのことではなく、「夢」としてのことだった。
「フェアリーヒル」構想もまだ夢の段階だけれど、「フラニストの森」よりは現実味を帯びていると信じている。それは、「森」という面積的な制約もないし、膨大な資金を必要とするフラニストセンターなどの施設の建設も必要なく、関わってもらうアーティストなどの人も最小限で始められるからだ。

  • 名称:FAIRY HILL(フェアリーヒル)妖精の丘、企画案 
  • 趣旨
    富良野は全国的なスケールで多くの人の憧れの対象になっています。雄大な山、滔々と流れる川、曲線美を誇る丘陵、ロマンを誘うラベンダー、爽やかな草原、神秘に彩りを変える雪原、抜けるような青い空、幻想的な冬景色、住んでいるぼく達でさえ感動することがしばしばあります。富良野は「聖地」だと言った人がいますが、本当にそうだと思います。
    オフィスFURANOは富良野に生まれ、育ち、富良野を愛し、富良野のイメージを大切に色々な事業を展開してきました。
    とくに、写真家・那須野ゆたか氏との仕事は、富良野のイメージを高めたと、評価されています。
    今回の企画はさらに一歩進めて、富良野の美しいイメージを背景に、みんなが失いかけている「夢」や「希望」、「愛」や「感動」の大切さを再認識し、みんながより人間らしく生きていくために、オフィスFURANOのポジションとして何が出来るかを考えたものです。
    そのぼくらなりの表現が、このフェアリーヒル物語なのです。フェアリーヒルは架空の村の名前です。富良野のイメージとイギリスの小さな村のイメージを合わせた感じで、時代感覚は現在より古いイメージだけれど、特定するほど明確ではない。こに住んでいるごく普通の心やさしい家族を中心に話は進んでいきます。
    具体的には、基本になる物語を創って本や絵本にし、それをイメージする富良野の丘にフェアリーヒルという名前を付け、物語に出てくるのと同じ建物を建て、物語と現実をオーバーラップさせながら展開します。
  • 内容・フェアリーヒルのイメージ
    富良野周辺の丘陵地帯にある集落とイギリスの小さな村を合わせたイメージ。フェアリーヒルと名付ける具体的な場所が決まれば、その地形に合ったレイアウトも考慮するが、あくまでもイメージが大切なので、あまり現実にとらわれないで作家、絵本画家、建築家などと話し合って決める。
    ・家族
    おじいちゃん(65才)、おばあちゃん(60)、お父さん(35)、お母さん(30)、娘(7)、双子の息子(5)の7人家族。それに、家畜やペット。
    ・仕事
    ファーマー(農業)、富良野の特産物である、ジャガイモ、アスパラ、メロンなどを作っている。
    ・家
    丘の上にある、イギリス風の家。この家は富良野周辺の何処かの丘の上に実際建てる。この家がシンボル的な存在になる。木造か、石造りか、屋根や外壁の色やデザイン、外部や内部の設計はこの物語の作家、絵本画家、建築家と決める。
    ・生活
    おじいちゃん
    春はフキ、ウド、ワラビ、ギョウジャニンニクなどの山菜取り、秋はキノコ取り、 イトウ、ワカサギなどの魚釣り、熊、鹿、兎などの猟。子供達は物知りのおじいちゃんが大好きで、おじいちゃんも子供達に何でも教えてやりたいと思っている。
    おばあちゃん
    山ぶどう、コクワなどの木の実を摘み、ジャムやアルコールを作る。昔から言伝えのある薬草などを摘み、調合して薬にしたり、干してお茶や香辛料にする。また、味噌、醤油、豆腐、納豆なども作る。暇さえあれば、子供達のために機織や編物、縫物をしている。秋になるとお母さんと一緒に「ニシン漬」などの漬物を漬ける。子供達、とくにおねぇちゃんは、おばあちゃんの手伝いが大好き。
    お父さん
    春、夏は農作業で忙しいが、冬は森に行って木を切り、薪を作り、子供達のソリやスキーを作る。お母さんの家事に必要なものを作ったり、直したりする。
    お母さん
    農作業、家事で一年中忙しい。古いイギリス式のレンジやカマドを持つ台所で、色々な料理をする。バター、チーズなどの乳製品、ジャム、塩漬け、酢漬け、干物、薫製、瓶詰などの保存食を作る。
    子供達
    娘は小学生、息子は幼稚園に通っている。動物が好きで、じいちゃん、ばあちゃんには何でも質問し、いつも遊んでもらっている。
  • 要点
    ・近くに変わった人たちが住んでいる森がある。
    イメージとしては麓郷の森で、画家(葉祥明さん)、写真家(那須野ゆたかさん)、音楽家(浜田さん)、ガラス工芸家(豊平硝子の社長)などのアーチストが、共同で住んでいる。
    物語の中で画集や写真集、レコードが出てきて、一つの話になったりするが、現実にも制作、発売する。つまり、物語の中にフィクションとノンフィクションが交互する。
    ・料理
    富良野の特産物などをアレンジした料理を考える。ジャガイモ料理、メロンシャーベット、ニンジンスープ、山菜料理、キノコ料理、漬物、富良野で釣れる魚の料理など。料理の専門家の先生と相談して独自の料理を創り出し、物語にも出て来るが、別に本にして出版もする。
    ・動物
    富良野には東京大学の演習林があり、そこにはクマゲラをはじめシマフクロウ、熊、鹿、きつね、兎など色々な動物が住んでいる。演習林の先生に動物たちの詳しい話を伺い、物語にもその話を挿入していく。
    ・森林
    これも東大演習林の先生に話を伺いながら、木に「白樺じいさん」みたいな名を付けて物語に登場させ、森林の話を分かりやすく伝える。
    ・なになに屋
    鍛冶屋、指物屋、仕立屋、吹き硝子屋などの仕事を紹介し、物を作ることの難しさと尊さを伝える。
    ・伝説
    富良野に伝わっている伝説(原始ケ原の五反沼のクジラ伝説など)やそれをアレンジさせた話を考える。イギリスの妖精の話を参考にする。伝説まではいかないけれど、ある木の下で約束すると二人は結ばれるとか、滅多に見つからないキノコとか何十年に一度しか咲かない花の実を食べると、美人になる。というような話も考える。
    ・音楽会
    森の音楽会を物語の中でも、現実にも開催する。
  • 展開
    ・フェアリーヒル出版 
    1.フェアリーヒル物語
    すべての計画の基本になる本で、作家、絵本画家、建築家と協議しながら創る。初めに登場人物や場所、環境など概略の説明があり、後は、章ごとにショートストーリー風にまとめる。
    2.フェアリーヒル物語(絵本)
    本の絵本化。
    3.テーマごとの本
    物語に出てくることをテーマ別にまとめる。例としてフェアリーヒルの「料理」、「動物」、「森林」などで、写真と絵を中心に編集する。
    4.写真集
    フェアリーヒルの近くにある森の住人としての那須野さんの作品集。
    5.画集
    森の住人としての葉祥明さんの作品集。
    ・フェアリーヒルレーベル
    1.CD「フェアリーヒル」を浜田さんを中心に制作、発売する。
    ・フェアリーヒルブランド
    1.フェアリーヒルブランドの子供服を作る。
    2.フェアリーヒルブランドの生活用品を商品化する。
    3.フェアリーヒルブランドのキャラクター商品を作る。
    ・丘の上の家
    絵本と同じ外観と内部の家を建て公開し、本や絵本を含めたすべてのオリジナル商品を販売する。また、原画や写真などを展示する。

この企画書を書き続けていくうちに、イメージが膨らんですぐにでも実現出来る気分になったり、こんなこと出来るハズがないと弱気になったり、上がったり下がったりしたけれど、ぼくはなんとかやり遂げたい。まずは、この本が出来上がったらすぐに、他の資料とともに、ぼくらが「この人なら」と思っている人達に持って行き、このフェアリーヒル建設の夢を精一杯話すつもりだ。
幸いにも、絵のほうでは葉祥明さんが、建物の設計に関しては、東京芸術大学の建築科の大学院を卒業し、現在「環境文化研究所」の主任研究員をしている前田博さんが、協力は惜しまないと言ってくれている。作家に関しては、良い人と出会えたら最高だけれど、もし出会えなかったとしても、ある程度現実味が帯びてきたら、作家がいなくても参加者みんなでアイデアを出し合えば形になると思う。勿論、ぼくが作家ということもありうるが……。
「小田島、四十近くになって、子供みたいな夢を見るなよ」と、笑われそうだけれど、会社を始めた時のことを思えば、今こんな夢を語っていることの方が夢のような気がする。
何時からだったか忘れてしまったけれど、ぼくは自分が生まれてきた「意味」を考えるようになった。それは今まであまりにも良い人達と出会うことが出来たし、身に余る光栄な仕事もやってこれたからである。喜んで幸せを噛みしめて「オレは偉いんだ!」と思えばそれで済む話だけれど、自分には大した能力が無いのは自分が一番よく知っている。
大げさに言えば「ぼくは世の中のために、"何か"をするために生まれてきた」と考えることにした。そう考えることが、お世話になった多くの人達に対する「恩返し」になると勝手に決めた。
このフェアリーヒル物語が、その「何か」なのかどうかは分からない。しかし、誠心誠意、一生懸命頑張ろうと思う。そして、それを進めて行くうちに、また、沢山の良い人達に出会い、自分には身に余る光栄な仕事になったら、また「恩返し」を考えることにする。