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病気の話story of disease

ちょっとだけ病気の話

以前のホームページでは、病気に関して、エッセイ(ちょっとだけ病気の話)、糖尿病教室、高脂血症教室等を展開しておりました。リニューアルにあたり、再構成は不十分のため漸次更新としますが、以前のページはアクセスできない状況ですのでご容赦ください。

 そんな中、先日NHKの朝ドラ「カムカムエブリバデイ」を観ていたら、「椿三十郎」の懐かしい映画看板が目につきました。そこで今回も以前書いた一文ですが、再度アップします。実は今年の夏、東京の大学医学部の先生(解剖学教授)から電話があり、授業にこの話を使用したいとのこと、学生には興味ある話で面白いという感想をいただきました。とても嬉しくもちろんOKとさせていただきました。
このお話は、看護学校の高血圧の授業で何か面白い話はないかということで閃いたことで、参考にしたのは看護学校の教科書、何かの映画の本、そしてその中かどこかにあった映画の一場面の画像のみでした。今回も当時の画像を使用しましたが、不鮮明で、出典も不明ですが元画像をお持ちの方で、問題あるようでしたら削除しますのでご連絡ください。
*以前のホームページに掲載後、この一文を参考にされたか、同じ発想の方も多くおられたか、同じようなお話がいろいろアップされています。当然わが一文よりは、洗練され数学的にも優れたものも多く参考にされたらよろしいかと思われます・・・椿三十郎、室戸半兵衛、高血圧で検索されるときれいな画像も見られます。

●室戸半兵衛の血圧

「室戸半兵衛」と聞いても、黒澤映画を思い出す人はそれ程多くないだろう。 世界に誇れる?日本映画といえば、「ゴジラ」と「七人の侍」であると考えている私が、この二つの映画の封切りの年(1954年)に生まれたということは、本筋とは関係ない。しかし、黒澤映画で「七人の侍」の次に好きなのが、「椿三十郎」であるということには少し関係がある。そう、室戸半兵衛はこの映画の中で、三船敏郎演ずる椿三十郎の敵役なのである。「七人の侍」では、通りすがりの浪人役だった仲代達矢が、ここでは主人公三十郎と対極的な室戸半兵衛を好演している。「椿三十郎」の最後の対決シーンは、記憶に残る名場面である。息詰まる長い沈黙の対峙シーンに続き、一瞬にして斬られた半兵衛から噴水のように吹き出る血しぶき。常にリアルな画像を追求する黒澤監督の真骨頂であり、それまでの映画史上の中では、初の試みではないだろうか。今回は、この対決シーンから血圧の話をしてみようかと考えているが、こちらの方は、かなり強引になるかも知れない。

 心臓は、安静時で大動脈から1分間におよそ5リットル(一升瓶で約3本)の血液を全身に送り出している。これだけの血液を、身体の隅々に送り出すためには高い圧力が必要となる。これが血圧といわれるもので、心臓から送り出された血液が血管の壁に与える圧力なのである。その圧力は、水銀柱で120〜140(mmHg)で、細いガラス管に水を入れて測定すると1.6〜1.8m位まで上昇する。ここで、何らかの原因で高血圧が生ずると、常に高い圧力が血管の内壁に加わる。この高血圧が長期間継続すると、いくら弾力性を持つ血管といえども傷んでくるのである。そして、狭心症や心筋梗塞、脳卒中(脳梗塞・脳出血)などの動脈硬化性疾患の発症危険因子となり、腎機能低下ほか諸臓器に傷害を与える結果を招くのである。したがって、高血圧の治療は、これらの疾患の危険因子を低減するのが目的となる。

 日本高血圧学会では2019年に高血圧治療ガイドラインを発表している。この新しいガイドラインによると、高血圧は140かつ/または90mmHg以上(診察室)として、高血圧の程度により3段階に分類されている。治療のガイドラインであるから、高血圧の診断と治療の進め方に関しての一定の方針が記載されている。例えば、糖尿病・高脂血症・喫煙などの危険因子を持たない軽症の高血圧の場合は、1ヶ月程度の生活習慣の改善を試みて、なお140/90mmHg以上であれば降圧薬の内服を開始することを勧め、また危険因子がなくても180/110mmHg以上のV度(高リスク)高血圧であったなら生活慣習の修正を始めるとともに、直ちに降圧薬を開始することを勧めるといった具合である。もちろん、経験的な医者の匙加減が加わることは言うまでもない。  

 そこで、先ほどの対決シーンに戻ってみよう。 「椿三十郎」の公開当時、あの血しぶきの場面に喧々囂々(けんけんごうごうの論議が起きたとのこと。

 「あんなに血が飛ぶものか」、
 「いや、あれは正しい」、
  医者までも口出ししたという。

 そこで田舎の医者も口を出す。室戸半兵衛の血圧値を検証してみようという無謀な試みである。残念ながら、映画でもスチール写真(図)でも、飛び散った血しぶきの最頂点が描出されていない。したがって、この勢いならこれ位までといった、かなりいい加減な検討ではある。さらに長さの目安として半兵衛の日本刀の刃渡りを参考にしたが、これもあまり詳しくないので、大体65〜70pとして計算した。 先にも書いたとおり、血圧は水銀を押し上げる高さ(mmHg) で表記する。例えば、収縮期血圧が、120mmHgの場合、血管を傷つけたとき、その傷口から吹き上がる血液の高さは、水銀で120oとなるから、120oX13.5(水銀の比重)=1620oで、約1.6mである。室戸半兵衛の血が先の検討からおよそ最高で2.5m以上飛び散ったとして、逆算すると血圧は185mmHg以上となり、高血圧治療ガイドラインによると、半兵衛は重症高血圧となり、直ちに降圧薬を内服しなければならない状態であったと推定される。当時の侍の血圧値が、どれくらいであったかは知る由もないが、半兵衛が高血圧だった可能性を考えると、それ程突拍子もない血の吹き上がり方ではなかったような結論も引き出せる・・・と記載したら、かなりの反論があるのは当然である。重力も、血液の拍出量も、斬られた血管の太さ・種類・部位も無視しているからである。ただ、半兵衛が高血圧でないと、今回の話は成り立たないのである。ちょっとだけ?我慢して頂きたい。
(2001/4/21:一部改変)

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